邦画専門

雑感。

『有頂天家族2』 8話を掘り下げる

この回は本当によく出来ているので暇つぶしに掘り下げる。

 

Aパート

前半で重要となるシーンは、矢三郎が「俺なんか何1つ弱点ないよ」と発言するシーン、

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矢二郎が「いやはや母上の姿を見て気が緩んじまうとだめだね」と、化けの皮が剥がれてしまうシーン、

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矢三郎が、清水寺での弁天と2代目の会合に立ち会うシーンだ。

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どう重要かは後述するとする。

 

Bパート

で、後半。後半ではまず、矢二郎による「運命の赤い毛(糸)」の説明。

俺のよく知ってる2匹の狸がいて、そいつらは運命の赤い毛でぐるぐるなんだ。赤い糸ってのは妙なもんだよ。傍から見れば一目瞭然なんだが、そいつら自身にはちっともわからないらしい。 

ここでAパートを振り返る。前半で矢三郎は、弁天と2代目の会合に立ち会っている。傍から見ていた矢三郎には、弁天と2代目の間にある赤い糸が見えていた。矢二郎による赤い糸の説明が途中で毛から糸に変わっているのは、この説明が狸だけでなく、天狗である2代目にも、人間である弁天にも共通であることを裏付けている。しかし矢三郎は弁天に惚れている。

前半で弁天と2代目の会合に立ち会い、恋敗れそうになった矢三郎は、後半で矢一郎に海星との婚約の復活を持ちかけられ、「姿も見せないへんてこな許嫁はまっぴらだね」と、意地になり、山へ引きこもってしまう。

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すると、山へ引きこもった矢三郎のもとに海星が現れる。いつものように繰り広げられる罵詈雑言の嵐。しかし、「お前と結婚するくらいなら漬物石と結婚した方が幸せになれらぁ」という矢三郎のいきすぎた発言に、海星は涙してしまう。海星は矢三郎に惚れていたのだ。意地になった海星は、矢三郎の言葉を真っ向から否定するべく、ついにある"秘密"を打ち明ける。その秘密とは、矢三郎は海星の姿を見ると、化けの皮が剥がれてしまうというものだった。f:id:hanazawaproject:20180228023907p:imagef:id:hanazawaproject:20180228023910p:image

ここでAパートの矢二郎の発言「いやはや母上の姿を見て気が緩んじまうとだめだ(化けの皮が剥がれてしまう)ね」。狸における化けの皮というものは心に動揺が生じると剥がれてしまうものなのだ。

では、ここで矢三郎に生じた動揺とは一体何か。私は"恋"ではないかと考える。一目惚れというやつだ。

すると海星は、今まで自分が人間の姿で人間社会に溶け込めるように、姿を見せない配慮をしてくれていたのかと、矢三郎ほどの機転の持ち主であれば、否が応でも思い至るだろう。そして矢三郎は、今まで姿を見せなかった、へんてこだと思っていた海星の真意を知り、自覚する。自分は弁天に想いを寄せる一方で別の女性にも恋をしている。なるほど確かに自分と海星は赤い毛でぐるぐるまきのようだ。海星との婚約を復活しないわけはもうどこにもない。だって好きなのだから。ああ、これが弁天様のことを諦めるしかない。弱点などないと思っていた俺の唯一の"弱点"だ、と。

 

Aパートで張った伏線をBパートで鮮やかに回収する今話。30分間余すところのない、完成された回でした。終わり。