邦画専門

雑感。

『劇場版 響け!ユーフォニアム』 あなたはどうして泣かないの?

公式サイト(http://www.anime-eupho.com)

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新年度を迎え、高校2年に進級した久美子たち。学年が変われば、当然、周囲の環境も変わる。北宇治高校吹奏楽部にも新入部員がやってきた。期待に胸を膨らませる者、滝先生に胸を膨らませる者など様々だが、そんな部内の様子を一歩引いたところから伺う人物が一人。新入部員の久石奏だ。エンドロール後に黄前久美子の部長就任宣言を撮影したことで発覚するのだが、スマホのようなアスペクト比の画面で部内の様子を写し出していたのは久石奏の視点だったのだ。

[前半部分のスマホ様画面は実際のスマホの画面ではない。後述するが、周囲の目を人並みに気にする久石奏は、初対面の人物が沢山いるあの場では、スマホは使えなかったと捉えるのが自然だ。なので、スマホ様画面は単にスマホで撮影しているというのではなく、久石奏のものの見方(視点)を表していると解釈して話を進めていく]

"気になって近づくくせに、傷つくのも傷つけるのも怖いから、なあなあにして安全な場所から見守る"、という田中あすかがズバリ言い当ててみせた久美子の人間性と、昨年度のオーディションについてずけずけと尋ねてくる割には、先輩を押し退けてコンクールに出場することに対して後ろ指をさされることを危惧して、オーディションで本来の演奏を披露しない、という久石奏の行動は合致している。久美子と久石奏の人間性が似通っていることに疑いの余地はないのだが、映像としてそういった演出がないわけでもない。先述のスマホ様画面は、久石奏が部内環境を伺う以外にもう一つ、別のシーンで使われている。それが、久美子が加部友恵を「加部ちゃん先輩」と呼ぶようにした時である。つまり、対話する前から二人は同じような視点を持っており、それが、"安全な場所から見守る"という二人のスタンスに繋がり、翻って似通ったパーソナリティがあるということになるのだ。

大分ひねくれた性格の久石奏だが、久美子の「頑張れば何かあるって信じてる」という説得もあって、いよいよコンクール本番を迎える。演奏前に久美子は奏に対し、"中学のコンクールで私、泣けなかったんだ"という話をしていた。それは、本気で吹奏楽に打ち込んでいなかったからダメ金でも満足できた、だから涙が出なかったという話なのだが、果たして、負けたら悔し泣きしてしまうほど強烈に練習に打ち込むだけが吹奏楽なのだろうか。いや違う。なぜなら久美子は本番後、泣いていないのだ。「泣けなかった」と「泣いていなかった」では大きく意味が異なる。全国大会進出を逃しても、久美子は満足気にバスのシートにもたれかかる。理由は簡単。頑張った、からだ。

『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』本予告 - YouTube

1年生の指導という中間管理職を任され、顎関節症で奏者を断念する先輩がいる一方で、ファミレスで熱いものを食べる時に口周りをいたわらないような後輩に「頑張るってなんですか...」という問いに対して解答を示してあげられたこと。TVシリーズでは物語の端にしか描かれず、劇中では少なくとも半年間保留し続けた恋に一つの区切りをつけること。金賞を獲るということだけが吹奏楽ではないのだ。恋も部活もひっくるめて久美子にとっての青春なのだ。

しかし、劇中で触れられながらも、未だ解決されていない課題が一つだけ残っている。久美子が青春を謳歌する裏で、ある一つの物語が進行し、それに対しての目配せが行われていたことを我々は知っている。久美子に残された課題とは、『リズと青い鳥』で鮮明に、しかし残酷にも描かれた"将来"についてだ。3年生になった久美子は、恋に部活に将来に、どんな選択をしていくのか。

以上。

 

TVシリーズ1期2期、『リズと青い鳥』を振り返りつつ、続編への期待感も残した中間管理職を描いた中間管理職のような今作でした。『リズと青い鳥』のソロパートを聞くと涙が止まらなくなってしまう身体環境になってしまっていました。

 

『名探偵コナン 紺青の拳』 やっぱり奇術師か

公式サイト(https://conan-mobile.jp/movie23/)

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19世紀末に海賊船と共にシンガポール近海に沈んだとされる、世界最大のブルーサファイア"紺青の拳(こんじょうのフィスト)"。
現地の富豪が回収を目論み、表舞台にその姿を現した時、マリーナベイ・サンズ近郊にて殺人事件が発生。
現場には、怪盗キッドの血塗られた予告状が残されていた─。
そしてその頃、シンガポールで開催される空手トーナメントを観戦する為、蘭と園子は現地を訪れていた。

パスポートを持っていないので海外渡航できないコナンは留守番のはずだったが、彼を利用しようとするキッドの奇術的な方法により、強制的にシンガポールへ連れてこられてしまう。
従わなければ日本に帰ることすらできないコナンは、メガネ、腕時計、服などすべて奪われ変装することに。
その正体に気付いていない蘭に名前を聞かれ、とっさに「アーサー・ヒライ」と名乗る。

キッドはある邸宅の地下金庫にブルーサファイアが眠っているという情報を得る。
いとも簡単に侵入成功したと思われたが、危険すぎる罠がキッドを待っていた。
立ちはだかったのは、400戦無敗の最強の空手家・京極真。キッドの命運は……!?
そして、不吉な何かを予兆するかのように、シンガポールの象徴・マーライオンから深紅に染まった水が放出される!

"獅子の国"の煌めきが黒炎に包まれる夜、世界を揺るがす闇の計画と、新時代への鐘の音が鳴り響く!

劇場版名探偵コナンに欠かせないのが、阿笠博士によるクイズだ。毎度その内容が物語にある程度かすってくるので、今回も私は注視していた。

シンガポールで一番人気のあるイベントは?」

まぁ答えは国旗掲揚なのだが、解説は割愛させていただく。さて、このクイズがどう物語に触れていたのか、だが、エレベーターに貼られていた血糊付きの予告状を思い返していただきたい。あれは黒幕がキッドをシンガポールに呼ぶために仕組んだものだが、わざわざ血糊をつける意味は薄いように思う。下手をすれば手に血糊が付着しているとして、その場で手錠をかけられかねない。つまり、血糊をつける必要が黒幕にではなく、制作側にあったということだ。白い予告状に赤い血糊、そう、シンガポールの国旗に似せるために。

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繰り返すが、シンガポールで一番人気のあるイベントは国旗掲揚だ。皆さんは気づいただろうか。キッドが最初に紺青の拳を盗もうとして失敗した時と、海賊から園子を守るべく京極さんのミサンガを断ち切った時とで、キッドを目撃した人々の反応が「大きい鳥が飛んでる」から「怪盗キッドよ」に変化していたのを。劇中で描かれこそしなかったが、キッドがシンガポールにいないという認識では、宙を舞う白い物体といえば鳥かせいぜい飛行機だ。しかし、キッドがシンガポールにいるという認識の下なら、カモメだってキッドに見える。つまり、一度目のキッドの暗躍により、シンガポールはキッドフィーバー。国旗掲揚並に大盛り上がりだった(のかもしれない)のだ!

 

また、今作では

真実vs奇術vs蹴撃 雌雄を決する三位一体バトルミステリー

と謳っており、キッドがこれについて興味深い発言をしていたのを思い出す。

まるで何かを握りこんだように見せるのが奇術師、その中身を当てるのが探偵だろ。

(うろ覚えだが意味は違ってない。)

何かを握りこんだように見せるのが奇術師、それはつまり、本当は何も握りこんではいないということだ。しかし、観衆は握りこんでいると思っている。今作で奇術師たる怪盗キッドが、ハメられ、掴まされた(握らされた)のは、殺人犯という濡れ衣に他ならない。そして、キッドが本当は何も握りこんではいないのだと証明すること、真犯人を特定するという役目を負うのが探偵たるアーサー・ヒライ、もとい、江戸川コナンである。

では格闘家は?今作は"三位一体ミステリー"のはず。奇術師が違うと証言し、探偵が暴いたのなら、格闘家の担うべき役目は1つ、真犯人を捕まえることだ。実際、ミサンガの呪縛から解き放たれたスーパー京極サンは、その場の武装した海賊、ざっと20人程度をあっという間にのし、シンガポール随一の空手家を圧倒してみせた。←かっこよかった。

しかし皆、あんまり京極真ばかりフィーチャーされすぎたせいでお忘れではないだろうか。京極さんはアメリカへ旅立ってしまったが、あの場には京極さんの他にもう1人、格闘家に足る人物がいたことを。その者が帰国時に掴んでいた腕の主は、日本では確かに真犯人の役に足り得るスターだったはずだ。結局、奇術師(おまえ)か。

以上。

 

事件を持ってくる依頼人役、一般人と同じ目線に立つ助手役、真相を暴く探偵役がいるというベタなミステリの法則から、奇術師と探偵と格闘家で事件を解決するというところに発想を飛ばしたところについては新鮮でした。

また、今回は劇場版名探偵コナン初の女性監督ということで、男性キャラの魅力を最大限引き出すことに成功していたように思えます。スーパー京極サンと照れる京極さん、涼しい表情で追っ手を躱すキッドと銃で撃たれた箇所の応急処置をするキッドなどなど、少しギャップを多様していたかな。また、園子が京極さんに怒る理由も非常によかった。あれって多分、女性の方はすごく共感するんでしょうね。調べてみると監督を務めた永岡智佳さんは『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEキングダム』でも監督を担当されているそうで妙に合点がいったり。女性目線の演出というのも面白いですね。

それと2020年のコナンは緋色です。

 

 

『夜は短し歩けよ乙女』 白い機関車役

公式サイト(http://kurokaminootome.com/sp/)

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ある結婚式会場。祝いの席ゆえにほとんどの者が酒に酔い、顔を赤らめている。つぶれるのを嫌ってか、黒髪の乙女の同席者はノンアルコールで異口同音。ジュースを注文しだす。まだ飲み足りない乙女であったが、そこはその場の流れにあわせて、しぶしぶといった感じでジュースを注文する。そんな乙女を離れた席で見つめる白いワイシャツを着た腐れ男子大学生が1人。黒髪の乙女に想いを寄せる先輩だ。先輩はこれまで、"るべくノジョのにとまる作戦"、通称『ナカメ作戦』を実行してきた。彼女の外堀を埋めていると言えば聞こえはいいが、単に告白する勇気がないので、『ナカメ作戦』にて黒髪の乙女に自分の存在を意識させることで、乙女からの告白を待ちわびているという状況だ。そうしている間に結婚式は二次会へ。周りに気を遣うことなく酒を楽しみたい黒髪の乙女は、単身、京の町へ繰り出す。最初に向かった先はBAR。そこで乙女は、東堂さんという気のよさそうなおじさんに出逢い、酒を酌み交わす。ところが、この東堂が助平で、どさくさに紛れて乙女の乳を揉んだりする。乙女はおともだちパンチを以てこれを撃退。先輩も黒髪の乙女の後を追うのだが、BARに入った乙女に対してどうアプローチを仕掛けるか思案に暮れていたところ、見知らぬ黒スーツの男に襲撃され、パンツを奪われ、ズボンを失ってしまう。下半身すっぽんぽんの先輩は、先ほど乙女に殴られたことでBARに居所をなくした東堂に出会い、衣類を頂戴する代わりにやけ酒に付き合う約束を交わす。聞けば東堂は間もなく、李白という老人への借金のために秘蔵の春画を売却しなくてはならないという。一方、乙女はBARでのおともだちパンチを見初められ、居合わせた樋口清太郎、羽貫涼子と共に飲み歩くこととなる。そうするうちに、乙女がかなりの酒豪だということが発覚し、同じく酒豪の李白と飲み比べをするよう勧められる。タイミングよく東堂の春画の取引の場で李白と相見えた乙女は、BARにてご一緒したことを何かの縁とし、飲み比べで勝利したあかつきには東堂の借金をチャラにするよう持ちかけ、見事、李白に飲み勝つ。同時刻の先輩はというと、BARの前で奪われたはずのパンツを李白の三階建て電車で発見する。黒スーツの男は李白が金で雇った手下だったのである。しかし、結局先輩はパンツを取り返せず、すっぽんぽんの下半身を黒髪の乙女の前にさらし、東堂よろしくおともだちパンチを喰らうのだが、『ラ・タ・タ・タム』という絵本を黒髪の乙女が探しているという情報をキャッチする。

マチアスくんは、ある日ちいさな白い機関車を完成させたが、工場長にとりあげられてしまった。がっかりして町を出ていったマチアスのあとを追って、ちいさな機関車のふしぎな旅がはじまる。

《ラ・タ・タ・タム》あらすじ 岩波書店web

それは乙女が幼少の頃に読んだ思い出深い1品で、乙女はこれを探しに納涼古本市を訪れる。無論、先輩もこの『ラ・タ・タ・タム』を獲得せんとし、古本市にて開催される激辛火鍋の耐久レースに挑む。しかし、この耐久レースの景品の本達は、李白が違法に収集したものであった。ひょんなことから乙女と結託した古本市の神は、違法収集家許すまじとして、耐久レースの場に現われ、違法に収集された本を元の場所へ戻す。しかしこの耐久レースに勝利していた先輩がそう簡単に『ラ・タ・タ・タム』を手放すはずがなく、数十メートル後頭部を地面に擦り付けながらもなんとか『ラ・タ・タ・タム』を死守する。しかし、先輩の苦難はこれでは終わらない。先輩は乙女の先輩であるがゆえに学生、学生には学園祭がつきものということで、物語の場面は学園祭へと移行する。聞くところによると、その学園祭では違法なゲリラ演劇が開かれており、その演劇には乙女の出演が確定していて、ラブシーンにはキスの演出まであるという。自分以外の相手との乙女のキスは断固阻止せねばならない先輩は、ゲリラ演劇で乙女の相手役を乗っ取り、半強制的に乙女とキスをしようと画策する。先輩は舞台上で乙女を抱きしめるまでに至るが、それもすんでのところで失敗に終わる。乙女との間になんの進展も得られなかったところに追い打ちをかけるかのように、先輩は風邪をこじらせてしまう。しかし、病床に伏せった先輩のもとへ、これまで出会った人物から「アイツも風邪だ」と聞かされた乙女が看病に訪れる。そこで乙女は、乙女の名前が記された唯一無二の『ラ・タ・タ・タム』に出会い、「大事にします」と言う。ここで、あれだけ酒を飲んでも一切変化がなかった乙女の顔がはじめて赤らむ。

以上が大まかなあらすじだが、白いワイシャツを着た先輩が乙女を追うこの構図が『ラ・タ・タ・タム』をなぞらえていることは自明である。しかし、それは乙女の側にも言えることでもある。そもそも、なぜ乙女は『ラ・タ・タ・タム』をもういちど読みたいと思うに至ったのか。文学において、人物を動かすには動機が必要である。動機のない行動など、暇つぶしに教科書の隅に書くようなパラパラ漫画となんら変わりない。すなわち、乙女が『ラ・タ・タ・タム』をもう一度読みたいと思うようになるためには、乙女の心のうちに『ラ・タ・タ・タム』にひっかかる何かがあったはずなのである。おそらく、そのフックの役目が『ナカメ作戦』なのだと思う。なるべく彼女の目にとまろうとして乙女を"追う"という行動が、白い機関車がマチアスを"追う"という行動と重なったのか、はたまた乙女からしてみれば、行く先々で先輩に出会っているわけだから、知らず知らずのうちに自分が先輩を追っているという刷り込みが行われ、白い機関車と被ったのか。どちらにせよ、乙女のフックが『ナカメ作戦』であることに疑いようはない。しかも、『ナカメ作戦』は形を変えて劇中でも行われている。『ナカメ作戦』の本意はなるべく彼女の目にとまることではなく、なるべく彼女の目にとまることで"気をひく"ことにある。この"気を引く"という点においては劇中の冒頭から終盤まで、結婚式会場に同席したり、飲み比べの現場でお友達パンチを喰らったり、古本市で目撃されたり、演劇で抱きしめたりなどして繰り返されてきたことでもある。この1年のような1夜の間に、乙女と先輩の体験した出来事は違えど、先輩は乙女と同じ時に同じ場所で同じ人物に出会っており、その縁が後に乙女を先輩のもとへ導くことになるのだ。つまり、先輩が白い機関車として歩んだ道のりは、同時に乙女が歩んだ道のりでもあり、先輩が乙女にとっての白い機関車なら、先輩の病床へ辿り着かんとする乙女もまた、先輩にとっての白い機関車になり得るのである。先輩による『ナカメ作戦』が実を結び、マチアスと白い機関車の関係と同じになれたなら、間違いなく2人は両想いなはず。

以上。

 

『私に天使が舞い降りた!』12話(最終話) 神殿のしかけ

公式サイト(http://watatentv.com)

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幸せに満ち溢れた作品でした。

 

神殿のシンボルマークが気になったので、各シーンを比較してみると、アネモネがデイジーに出会う前と後で変化していることに気がつきました。

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出会う前↑

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出会った後↑

 

その他に変わったことといえば、天使の世界と人の世界の隔たりがなくなったこと。

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それから、人になったアネモネが亡くなることを示唆するシーンの直後の劇中歌の詩にも注目していただきたいです。

初めて 芽吹いた 風を 感じる

初めて 目にした 鮮やかな 色

初めての 愛が 世界を 包みゆく

 

以上のことから分かるのは、世界が変わったということ。

天使から人になること、受け取れないはずのケーキを受け取ったこと、おそらくどちらも、この世界では初めての出来事だったのでしょう。アネモネとデイジーの出会いによって、アネモネ自身の世界のみならず、世界の理そのものも変わった。天使が人から愛を享受できるようになったのです。だから、神殿のシンボルは変化し、天使の世界と人の世界もひとつになった。

 

そして最も重要なのが、このシーン。

みゃー姉の目を中心にカメラがズームしていって、アネモネの物語が始まります。つまり、この世界の物語は、星野みやこが見たものであって、星野みやこの情景なんです。

 

天使と人が出会って世界が変わっていくこの物語の構図は、花ちゃんに出会ってから少しずつ変化していくみゃー姉とよく似ています。

初対面の小学生ともまともに会話することができなかったみゃー姉でしたが、花ちゃんとの出会いを経て、乃愛ちゃん、小依ちゃん、夏音ちゃんとも友好的な関係を築けるまでに成長しましたし、引きこもりゆえに家だけで完結していたみゃー姉の世界は、ショッピングモールで買い物をしたり、おしゃれな洋菓子店に並んだりと、確実に広がっていきました。

さらに、11話の「まぁ、今度ある自分の学祭は行かないけどね」という意思から、12話では「大学の文化祭も行ってみようかなっ。みんなと一緒に」というふうに、わずか1話の間にも、みゃー姉はこれだけ変化しているんです。

 

つまり何が言いたいかというと、

あなたのすぐそばにいるよ 気ままな天使たち

というように、私達の日常は時に誰かにとっては大きな変化をもたらすような小さな出会いやささいな出来事で溢れており、それに触れたみゃー姉の見た情景がそうであるように、私達の生きているこの世界は幸せで満ち溢れているのだということを、わたてんは教えてくれています。

以上

 

 

『マスカレード・ホテル』 愛のカタチ

公式サイト(http://masquerade-hotel.jp/sp/index.html)

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冒頭、劇伴と共にホテルの内部が写し出され、紹介される。それはロビーの構造であり、客の入り具合であり、関係者入口である。この作品はミステリであるということを念頭において鑑賞すると、これが現場検証なのだと解る。つまり、ロビーの構造は単純なもので物理的なトリックはほぼ不可能だということ。客の入り具合からしてロビーで細工をしようとすればすぐに怪しまれるであろうということ。そして関係者入口はフロントの裏にあり、スタッフに扮して紛れ込むのは不可能だということ。

物語の発端は3つの殺人事件。いずれの現場にも数字の暗号が残されていたことから、警察はこの3つの殺人事件を連続殺人と断定。数字の暗号は緯度と経度を示しており、次の犯行現場を予告していた。そして4番目の犯行現場として指定されたのが一流ホテル、コルテシア東京。被害者や殺害方法に共通点はなく、犯人の目星が全くつかない状況を鑑み、警察は潜入捜査に踏み切ることとなる。冒頭の映像ではホテルの従業員の普段の仕事振りと、ホテルに捜査本部を設置する警察の映像が写し出されるのだが、表情、所作、服装、言葉遣い、全てが対照的で、今回の潜入捜査が一筋縄ではいかないことが伺えた。

しかし、犯人の目星が全くつかないと言ってもミステリの手前、潜入捜査が進行するにつれ、容疑者候補は出てくる。ここではホテル内部から入口を真正面に捉え、来店する宿泊客を写し出すことで、映像的に容疑者候補をリストアップしていた。

木村拓哉演じる刑事・新田浩介は帰国子女で英語が話せるという理由から、潜入捜査においてフロントに立つ。慣れないホテルの仕事を刑事らしい鋭い観察眼でカバーすることで、長澤まさみ演じるホテルマンであり新田の教育係でもある山岸尚美といがみ合いながらもなんとかホテルマンとしての業務をこなしていく。観察眼というのは例えば、視覚障害者の老婆が手袋をはめていたことから、視覚障害者が触覚に頼らないのはおかしいとして偽装を見抜いたり、部屋のバスローブが紛失したことでその部屋の宿泊客に疑いがかかるが、未使用のバスローブを盗まないのはおかしいとしていちゃもんをつけられるのを防いだり、贈り物のワインの包装がデパートのものであるにも関わらず、発送の消印が自宅からになっていることに気づき、中を確認するとコルクに注射針を貫通させた跡が見つかったりなどである。こうして新田は次第に山岸とホテル側の信頼を勝ち取り、立派なホテルマンとして仕上がっていくのだが、来店した1人のクレーマーに「雑誌のコラムを全て打ち込むまで外に出るな」「電話をかけたら宿泊している部屋からすぐに折り返しの電話をかけろ」と指示を受けたことでクレーマーの部屋に拘束されてしまう。事務仕事が苦手な新田は山岸に代わりを依頼するのだが、新田は部屋の外に出ることができないため手持ち無沙汰になり、側面にホテルのロゴが刻印された文鎮を弄り、元に戻す。この元に戻すというシーンが重要で、知っていなければ縦横が分からないようなホテルのロゴを正確に理解し、正確な向き、正確な位置に置いたことこそ、ホテルマンとしての新田浩介が完璧に仕上がった証拠である。

ラストは踏み入った部屋の文鎮が横になっていたことが新田に犯人が部屋に潜んでいることを気づかせるきっかけになるのだが、その真犯人を演じたのはテレビドラマ『HERO』のヒロインでもある松たか子であった。『HERO』の監督がメガホンを取った今作で『HERO』では互いに相棒だった木村拓哉松たか子が『マスカレード・ホテル』では刑事と犯人になるという真逆の関係性も面白かった。

こうして事件は一件落着。真犯人の標的にされていた山岸とそれを救った新田はこの一件で更に関係を深めたが、事件が解決したことで潜入捜査は終わり、山岸と新田の繋がりはなくなってしまうのだった。しかし、総支配人の粋な計らいで、後日、2人のための食事の席が用意され、新田はホテル・コルテシア東京に招かれることとなる。

数日経った後、新田は再びホテル・コルテシア東京を訪れる。すると、突如として新田の周囲の客達がワイングラスを片手にドレスにマスクという仮面舞踏会の様相を呈する。この時、新田は事件を解決に導いた自身の観察眼をもってしても、ホテルマンという仮面の向こう側の"山岸尚美"の魅力には気づけていなかったと自覚する。だから新田の周囲は仮面舞踏会に変わるし、山岸はそこで仮面を外す。思えば、冒頭の紹介映像に登場する男性2人と新田に嫌がらせをしたクレーマーを除けば、ホテルを訪れた容疑者候補の人物達には皆それぞれ異なる「愛のカタチ」があった。上京する夫の為にホテルの下見をする老婆、金で女を従えた男、浮気している夫の不倫現場を抑えようとする女、密会する著名人、披露宴の打ち合わせ。

ひょんなことからホテルを訪れ、潜入捜査を通して育んだ"信頼"こそ、この2人の「愛のカタチ」である。

以上。

 

『かぐや様は告らせたい』有能プロデューサー

公式サイト(https://kaguya.love)

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2019年1月より放送開始となった『かぐや様は告らせたい』、物語も抜群に面白いのですが、プロデューサーの仕事ぶりが目に見えるほどいいのです。

アニメにおけるプロデューサーの仕事

アニメのプロジェクトでは大きく分けて2つのプロデューサーがおります。

1つはアニメの制作担当者。通常のアニメで「制作」と呼ばれる役職のチーフがここでのプロデューサーになります。各話の担当は「制作進行」で、その制作進行を束ねているのが「制作デスク」で、その上がプロデューサーです。主な業務は、監督、シリーズ構成、キャラクターデザイナーなどといったメインスタッフを決めたり、制作スケジュールの調整を行います。

もう1つはアニメの投資担当者。制作会社にお金を払って作ってもらったアニメを運用する人です。出資した各社の集合体は製作委員会にあたり、アニメを上手いこと宣伝することで、投資金額以上の利益を回収することが目的です。出資社のリクエストは大体プロデューサーを通して現場に伝わります。

では『かぐや様は告らせたい』のプロデューサーの仕事を順を追って見ていきます。

放送直前特番

本編放送より1話分先んじて、前期アニメの最終回に合わせて放送することによって、前期アニメ視聴者達の目にタイトルを留めさせ、「見てみようかな」と思わせられるのが放送直前特番です。『かぐや様は告らせたい』でもこの特番が放送され、主にキャストやスタッフへのインタビューを通して貴重な制作裏話が聞けました。古賀葵さん、小原好美さんなど、割と経歴の浅い声優さんが起用されているので、自分が知らなかった声優さん達の人となりがチェックできたことが有難かったと印象に残っています。放送直前特番自体はさして珍しいことでもなく、各クールでちょいちょい見受けられますが、特番だってアニメの制作自体が順調でなければそもそも映像を作る暇さえありません。

チカダンス

3話でのいわゆる特殊エンディング。EDテーマ「センチメンタルクライシス」が「チカっとチカ千花っ♡」に置き変わり、高すぎるクオリティのEDアニメーションが話題になりました。この映像はロトスコープで描かれた原画に、質量、重力を感じさせる機微を生み出す動画、動く背景(千花が投げたベレー帽)など、制作に携わったスタッフ全員がベストワークを発揮しており、放送後は"踊ってみた"などの二次創作が投稿され、それはもう抜群の宣伝効果を生みました。原画、絵コンテ・演出を手がけられた中山直哉さんは現在フリーランスで、このEDアニメーションのみの参加なので、おそらくプロデューサーからの依頼があったのではないかと睨んでいます。俗に言う"3話切り"を防ぐために。ちなみにチカダンスの動画は現在アニプレックスyoutubeで公開している動画の中で視聴回数トップだそうです。すごい。(https://youtu.be/Ywq4XR0G4Qk)

乃木坂46

7話放送後、アイドルグループ乃木坂46松村沙友理さんがチカダンスを踊った動画が投稿されました。トップアイドルがチカダンスを踊った、それだけでも十分な宣伝材料になりそうですが、投稿日である2/26は西野七瀬卒業コンサートの2日後なんです。これを予期して予め準備していたのか、単なる偶然なのかは定かではありませんが、とにかくプロデューサーはその時1番ホットな話題に『かぐや様は告らせたい』を関連付けることに成功したわけです。(https://youtu.be/gOnP4FG09-M)

クイズブーム

 無料動画サービスGYAO!では「声優だって告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳線〜」という『かぐや様は告らせたい』の特番が組まれているのですが、司会進行役の天津向さん、キャストの古賀葵さん、小原好美さんに加え、なぜか東大知識王の伊沢拓司さんも出演されています。昨今はクイズブームで、TVではクイズ番組を見ようと思ったらいつでも見れるほど毎日のように放送されていますよね。ご参考までに現在キー局で放送されているクイズ番組のリストです。

超問クイズ、日立 世界・ふしぎ発見!、東大王、ネプリーグ、超逆境クイズバトル!!99人の壁、中居正広のミになる図書館、クイズプレゼンバラエティー Qさま!!くりぃむクイズ ミラクル9、くりぃむvs林修!早押しクイズサバイバー、パネルクイズ アタック25、芸能人格付けチェックなどなど、

特番を除いてこの量。つまり、クイズ王の伊沢さんを招いてクイズブームにあやかろうという魂胆があるわけです。※説明的だとどうも有能さが伝わりませんf:id:hanazawaproject:20190314071105j:image

各メディアへの露出

9話放送後の『かぐや様は告らせたい』のメディア露出率は今期アニメの中で郡を抜いて高い(ような気がします)。DVD&Blu-rayの発売は既に決定していますし、AbemaTVで放送中の「声優と夜あそび」では"かぐや様と夜あそび"と題して3夜にわたるSPコラボ企画が組まれましたし、webラジオ「平成最後の告RADIO〜powerd by 四宮グループ〜」は緊急公開録音の開催が決定しました。舞台化まで。

 

こんなにも広く早いメディア展開が出来るのもプロデューサー達の上記行動が実を結んだ結果であり、プロデューサー達の迅速な対応があってのことです。アニメプロジェクトの成功は社内制作スタッフだけでなく、社外で奔走するプロデューサーの寄与度も大きいということが少しでも伝わればと思います。

以上。

 

 

『コードギアス 復活のルルーシュ』 お前と結婚

公式サイト(http://www.geass.jp/R-geass/)

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ゼロ・レクイエムの折、ナナリーがルルーシュの手に触れると、ルルーシュの経験した過去が映像として流れ込んでくる。相手の過去が映像として流れ込むこの現象は、ナリタでルルーシュがC.C.の乗る機体に触れた時と同じ現象であり、つまりゼロ・レクイエム時点でルルーシュはC.C.と同じコード保持者の状態にあり、不老不死の体質も獲得しているため、ルルーシュは生存している可能性があるというのが俗にいうルルーシュ生存説であった。

その説は見事に的中し、「復活のルルーシュ」においてルルーシュはシャルルのコードを継承、不老不死を獲得し、生存しているということが明かされた。

 

しかしそうなると疑問が残る。

 

何故コードを継承してからもルルーシュはギアスが使えたのか。

コード継承者はコード継承前に発現したギアスを使えない。C.C.の"愛される"という抑えが効かなくなったギアスもコード継承以降は消失している。にも関わらず、ルルーシュは不老不死になった後も何不自由なく"絶対遵守"のギアスを行使している。

これについては『復活のルルーシュ』において、C.C.の「コードの継承が不完全だったのだろう」という発言にて言及された。確かに『R2』においてルルーシュはシャルルからコードを継承ではなく、半ば奪取した形になる。そうすると、継承が不完全なのも無理もないことのように思える。

しかし、コードの継承が不完全であるということは、翻ってコードの一部を未だ別の誰かが保有しているということになるのだ。

そのコードの一部はシャルルが保有していた。

『復活のルルーシュ』においてC.C.は、コード保持者となり不老不死となったルルーシュの意識を取り戻すべく、Cの世界(意識集合体)でルルーシュの意識と繋がろうとしたのだが、既にルルーシュの手によって破壊されてしまっているため、ルルーシュは中途半端な形で意識を取り戻してしまう。C.C.はルルーシュの意識を完全に取り戻すべくアラムの門にて再度Cの世界に入るのだが、そこにはシャルルの強い想いがあり、ルルーシュの意識を完全に取り戻すことを妨害していた。そしてルルーシュはシャルルの想いに呑まれてしまうのだが、自力でこれを打ち倒し、ゼロ・レクイエムまでの意識、記憶を完全に取り戻すことに成功する。

また、記憶を完全に取り戻した後もルルーシュはギアスを行使しているので、尚も継承は不完全であると考えられる。『復活のルルーシュ』においてコード継承者はルルーシュ、C.C.、シャムナの3人だが、C.C.とシャムナの死亡するシーンはあるのに対し、ルルーシュの死亡するシーンだけがないのも、コードの継承が不完全で一旦死んでしまうと再度第三者がCの世界を通じてルルーシュの意識を回収する必要があるからだと考えると合点がいく。

 

しかしここでまた疑問が残る。

 

何故、C.C.はルルーシュを復活させたのか。

悪逆皇帝となり、人々の憎しみを一身に受けたルルーシュがゼロに殺されることで憎しみの連鎖を断ち切るというのがゼロ・レクイエムの概要だったはず。ルルーシュの死を以て完結するゼロ・レクイエムにおいてルルーシュは生きていてはいけないのだ。

C.C.がルルーシュを蘇生させたのは、ルルーシュに交わした契約を全うさせるためだった。

『無印(TVシリーズ一期)』で語られたその契約の内容は、ルルーシュがC.C.の願いを叶えること。C.C.の願いとは、不老不死となった自分からコードを継承し、不老不死でなくなった身体で死ぬこと。

しかし『R2』でV.V.から奪ったコードをルルーシュに奪われたシャルルは、代替としてC.C.のコードを奪おうとするのだが、ルルーシュの説得でC.C.はこれを拒否。不老不死の体質を解除する機会を逃すこととなる。これを機にC.C.の願いは「死ぬこと」ではなくなっている。

では新しい願いの内容とは何か。

『復活のルルーシュ』のラストにおいて、ルルーシュがと一緒に行くと言って、L.L.と名前を改めたことでC.C.は感涙している。

ここからは妄想だが、ルルーシュは『無印』におけるナリタでの記憶流出の一件でC.C.の本名を知っている。L.L.がルルーシュランペルージを文字ったように、実はC.C.という名も本名の文字りだったとして、ルルーシュがナナリーの一緒に暮らしたいという提案を断ってまで、同じ名前の改め方をして、同じ体質(不老不死)で同じ道を歩もうと宣言したこと自体がC.C.の願いの内容なのだとしたら、それはきっとルルーシュから「これからは苗字を揃えて同じ歩幅で同じ道を歩もう」というプロポーズをされたかったみたいなことなんじゃないかなと私は思う。

結婚って言わば契約だし、本来生き返らせてはいけないはずの男を蘇生させ、世話をしながら一年かけて各国を渡り歩くような行動をとる女がその男に対して何の気もないなんて、いくらなんでも嘘だと思わないか。

 

コードギアスシリーズ』において、ルルーシュとナナリー、スザクとユーフェミア等の関係性を見ても分かる通り、誰かが誰かを"想う"ということはとても重要な要素の一つであり、カレンもシャーリーもロロもカグヤも裏切られはしたがルルーシュのことを想っていたし、そんな想いの輪の中心にあるルルーシュが最後に誰か一人を選ぶというラブコメ的展開は十分に有り得ることで、上記の私の妄想も全部が全部当たっているとは言わなかいが、少なからず外れてもいないのではないかと思う。

以上。

 

追記:

シャルルの想いがコードの完全な継承を妨げているのなら、不老不死の肉体は与えてギアスを奪わなかったのもきっとシャルルの想いであって、それによってルルーシュに孤独を味あわせようと(「王の力はお前を孤独にする」)したのかな。皮肉にも不老不死を獲得したおかげでC.C.と共に生きていけるようになり、それによって2人の孤独が救われたわけだけど。

 

面白いと思ったのが『R2』ラストでルルーシュシュナイゼルにかけたギアスの内容が「ゼロに使えよ」だということ。この時ルルーシュが平和を願ってこのギアスをかけていたとしても、ゼロとなったルルーシュの現在の意向が争いなのであればそれに従い、後に平和を願うスザクがゼロになったとしてもそれを聞き入れるようになってる。「我に仕えよ」とかだとこうはいかない。ゼロ・レクイエムのシステム本当によく出来てる。